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今月のお題「私に吹いた季節風~片山耀将編~」 [きゅ~め~る今月のお題]

1年前、『葡萄酒いろのミストラル』再々演を決めた頃、
片山耀将はどちらかというとこの作品を上演することには反対だった。
彼なりの考えもあったのだろう、僕はそのことについて彼とあまり議論しなかった。
夏から冬にかけての半年間、僕らは関ケ原で共に過ごした。
特に年明けに控えているミストラルのことは話さなかった。
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2012年になり、公演が動き出した。
彼は誰よりもこの作品のこのタイミングでの上演を理解していた。
僕の中ではその時点で彼の配役が決まった。
『バルコック』という、掴みどころのない、何人もの人物として登場する「影」のようなキャラクター。
複数のバルコックに共通して言えることは、主人公の視点からは「ハードル」の役割。
気の持ちようで、鬱陶しい存在にもなるし、好敵手にもなる。
どの『バルコック』も非常に生真面目で、自分の本分を見つめてキリキリと生きている。
再々演となる今回、宮沢賢治の場面の一部をバルコックに担わせてみた。
賢治さんは今となっては崇高なイメージが強いけれども、
苦しみながら作品を生み出し続けた彼自身は、時に境遇を憎み、周囲との関わりを絶ち、
孤独の闇のなかで光のような作品を生み出した。

『バルコック』は一見して悪者だが、けっしてそうではない。
そして、良いイメージを持つキャラクターも、実はそればかりではない。
人間は、みな光と陰を持っている。
僕の中での『バルコック』とは人間そのもの。
だから『バルコック』は片山耀将に任せた。
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彼は、すべてのバルコックに全身全霊で魂を吹き込んだ。
彼が登場するたびに客席は笑いに包まれていた。みんな「人間」を感じていたのだろう。
人間の矛盾とは、ほんとうに愛おしい。

片山耀将は確かに滑舌は悪いが、毛穴のアンテナはとても敏感で、
そしてなにより、少年だと思う。
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